―叶えられなかった祈りより、叶えられた祈りのうえにより多くの涙が流される。

　トルーマン・カポーティという作家がこんなことを言っていました。実際、私たちが時に涙を流し、人間の素晴らしさを称える感動とはおおよそ「叶えられた祈り」そのものでしょう。アポロは月に到達し、はやぶさは万難を乗り越えて地球に帰ってきて、投資アパートは満室稼働する。そういうことのために涙を流すのも良いでしょう、少なくとも健康には。

　投資とは、成功が約束されないものです。それは暗黙のうちに祈りそのものです。やれることは無限にあるかもしれません、万全を期すことは出来るかもしれません。しかし、投げた賽の目がどう出るかは、つまるところ祈りでしかないのです。

　今年もめちゃくちゃな一年でした。何もかも予想通りだったと言い切れる人間がいるとしたら、今すぐ投薬治療を始めた方がいい。自信をもってそう言い切れる程度には、相も変わらず世界はハチャメチャです。だからこそ、帰ってこなかったはやぶさのために、群馬にも辿り着けなかったアポロ計画のために、すごいことになってしまった不動産物件のために、祈ることが僕たちには必要なのではないでしょうか。
　クソ物件とは、叶えられなかった祈りがこの世に徴した教訓です。しかし、彼らに対してただただ涙を流すのも、果敢にも資本主義の真空に向かって飛び立った人々に対して「無礼」と言える、そういうことは考えられます。では、我々はどうすればいいのか。もちろん大いに笑えばいいのです。

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　万物はあっという間に叶えられなかった祈りとなり、人々の記憶からも消えていく。しかし、それをインターネットに彫り込んで忘れまいとする人々も確かに存在する。クソ物件オブ・ザ・イヤーとはそういった営為なのだと思います。
　それはきっと素晴らしいことではないでしょうか。自信は持てないけど、たぶん。